認知症に気づけなかった…家族が見逃しやすい「5つの変化」とは?看護師が解説

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こんな質問が届きました

母親が認知症と診断されたときには、もうかなり進行した状態でした。もっと早くにわからないのでしょうか?同居の父親は「大丈夫」と言っていました。でも、考えてみたら、父親も認知症と認める強さ、寂しさを抱えていたのかもしれません。家族の変化に早く気づくポイントを教えてください。

「気づいたときには、もう進行していた」

認知症の親を持つ家族から、こういった声をよく聞きます。

一緒に暮らしている家族でさえ、なかなか気づけない。それはなぜなのでしょうか。

じつは、気づけないのにはちゃんと理由があります。

認知症は、ある日突然「なる」ものではありません。日常の中にあるちょっとした変化が積み重なって、気づいたときには進行している、ということが多いんです。

さらに言えば、家族が「見たくない」「認めたくない」という気持ちを持っていること自体が、発見を遅らせる大きな要因になっています。

この記事では、看護師として26年、介護施設の入所判定なども長年携わってきた現場の経験から、家族が見逃しやすい「5つの変化」 をお伝えします。


なぜ家族は気づけないのか

「まだ大丈夫」「うちの親に限って」

こういう言葉、思ったことはありませんか?

実はこれ、家族として自然な反応です。大切な人が変わっていくことを受け入れるのは、誰だって怖い。認めたくない気持ちは、愛情の裏返しでもあります。

ただ、その気持ちが早期対応を遅らせてしまうという現実もあります。

がんや他の病気と同じように、認知症も早期発見・早期対応が大事です。気づかなければ、対応できない。

まずは「見たくない気持ち」があることを自覚することが、最初の一歩です。


認知症は「特別な病気」ではない

もうひとつ、大切なことをお伝えします。

認知症は、特別な怖い病気ではありません。

加齢とともに、誰にでも起きうる自然な流れのひとつです。

「認知症になりたくない」という気持ちはよくわかります。でも、怖がって目をそらすより、正しく知って、早めに気づくほうが、本人にとっても家族にとっても、ずっと良い結果につながります。


家族が見逃しやすい「5つの変化」

わたしは、家族のライフイベントが起きたとき、同時に認知症・メンタルの変化・機能低下のリスクを頭に入れるようにしています。

大切なのは、変化そのものが認知症の原因になるわけではないということ。変化をきっかけに、社会とのつながりが減ったり、意欲が落ちたり、生活リズムが乱れたりすること——その積み重ねがリスクになっていくんです。


変化① 退職・仕事を辞める

定年退職は、長年頑張ってきた証。おめでとう、と言いたいイベントです。

でも現場で見てきた中で、退職後に「あれ?」と変わっていく方をたくさん見てきました。

仕事は実は、多くのものを提供してくれています。

  • 毎朝起きる理由
  • 会う人、話す言葉
  • 考えること、役割、達成感

それが一気になくなる。

退職後に社会とのつながりが減り、動かなくなり、話す相手もいなくなる——そういう生活になりやすいのが、このタイミングです。

特に、現役時代に仕事一筋だった男性は、退職後に趣味も地域のつながりもない状態になりやすく、注意が必要です。

「やることがない」「どこにも行かない」「誰とも話さない」——これが毎日続くと、脳への刺激がどんどん減っていきます。

退職後の生活をどうデザインするかが、ここでの鍵です。

チェックポイント: その人は、変化を楽しむタイプ?それとも、慣れた日常を大切にするタイプ?


変化② 引っ越し・施設への入所

新しい住まいへの引っ越し、施設への入所。どちらも、より良い生活のための選択のはずです。

でも、施設に入ったとたん急に元気がなくなった、引っ越してからぼんやりすることが増えた——こういう場面に何度も出会ってきました。

慣れた場所には、脳の中に積み重なった「当たり前」があります。

  • 毎日歩く廊下の幅
  • 台所の位置、窓から見える景色
  • 近所の顔なじみ

それが一気に変わる。

引っ越しや施設入所が直接の原因ではありませんが、慣れない環境への適応がうまくいかないと、混乱が続いたり意欲が落ちたりしやすい。もともと認知機能が低下気味の方は、特にその影響を受けやすいです。

環境が変わった後の関わり方が、とても大事なタイミングです。

チェックポイント: 今いる場所は、その人にとって「慣れた場所」ですか?


変化③ 配偶者・家族との別れ

大切な人を亡くすこと。これは、人生の中でもっとも大きな変化のひとつです。

配偶者を亡くした後、急に老け込んだ。夫が亡くなってから、妻がぼんやりすることが増えた。

こういった話、聞いたことはありませんか?

死別が直接、認知症を引き起こすわけではありません。でも、その後の生活の変化に気をつける必要があります。

  • 一緒に食事をする人がいなくなる
  • 話し相手がいなくなる
  • 外に出るきっかけがなくなる
  • 生活のリズムが乱れる

こういった変化が重なることで、社会的な孤立やうつ状態になりやすく、それが認知症のリスクにつながっていきます。

悲しみに寄り添いながら、その人の「日常」にも目を向けてください。ちゃんと食べているか、誰かと話しているか、外に出ているか。

チェックポイント: 大切な人を亡くした後、その人の日常は変わっていませんでしたか?


変化④ 病気・入院・手術

「手術前はしっかりしていたのに、退院してからぼんやりすることが増えた」

入院や手術が直接の原因ではありませんが、入院中はこんな変化が起きています。

  • 慣れない環境
  • 動かない時間が増える
  • 人と話す機会が減る
  • 生活リズムが崩れる

身体を治しながら、同時に脳への刺激がぐっと減る時期でもあるんです。

ここでひとつ、知っておいてほしいことがあります。

入院中に突然、辻褄の合わないことを言い出したり、夜中に騒いだりする「せん妄」という状態があります。認知症と間違えられることがありますが、せん妄は一時的な意識の混乱で、認知症とは別のものです。ただ、せん妄が起きやすい方は認知機能が低下しているサインのこともあるため、見逃さないでください。

退院後のその人の「いつも」と比べてみることが大切です。食欲、会話、表情——小さな変化に気づける家族の目が、一番のサインになります。

チェックポイント: 入院や手術の後、「なんか変わったな」と感じたこと、実はありませんでしたか?


変化⑤ 役割・生きがいの喪失

「最近、楽しいことある?」

この質問にすぐ答えが出てくるかどうか。これが、大事なサインになることがあります。

人は、「自分が必要とされている」という感覚で生きているところがあります。

  • 子育てが終わった
  • 地域の役員を退いた
  • 体が思うように動かなくなって、できることが減ってきた

こういった変化が重なると、「自分はもう必要とされていない」という気持ちになりやすい。

そして意欲が落ちて、外に出なくなり、誰とも話さなくなる——その積み重ねが、脳への刺激をどんどん減らしていきます。

現場で見てきた中で印象に残っているのは、「生きがい」がある人は、やっぱり違うということ。どんなに小さなことでも、「これがあるから明日も起きる」というものがある人は、表情が違います。

そして大事なのは、奪わないこと。「危ないから」「大変だから」と周りが先回りして何でもやってしまうと、その人の役割がどんどんなくなっていく。できることは、できる限り本人に。

チェックポイント: その人の「生きがい」って、今もありますか?


まず「否定しない」ことから始めよう

5つの変化を見てきました。どれも、誰の人生にも起きうること。特別なことではありません。

ここで、ひとつだけお願いがあります。

否定しないでください。

「そんなことない」「しっかりして」「前はできてたやん」

つい出てしまう言葉ですよね。心配だから、もどかしいから。

でも、今の状況を否定することは、その人そのものを否定することにつながってしまいます。否定される毎日が続くと、その人はどんどん自信をなくし、意欲を失い、閉じこもっていく。知らず知らずのうちに、認知症を悪化させてしまうことがあります。

まず、否定しない。受け止める。

今の状況を、そのまま見ること——それが、いちばんのケアだとわたしは思っています。


まとめ:気にかけるタイミングは「変化のとき」

ライフイベント気をつけたいこと
退職・仕事を辞める社会とのつながり・役割が減っていないか
引っ越し・施設入所環境への適応・なじみのものがあるか
配偶者・家族との別れ孤立していないか・日常のリズムがあるか
病気・入院・手術退院後の様子・せん妄との違い
役割・生きがいの喪失できることを奪っていないか

変化を見逃しやすいのは、見たくないから。受け入れたくないから。

でも、目をそらしている間にも、時間は流れていきます。

認める、知る。これが、最初の一歩です。


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この記事を書いた人:藪内加奈子(まちのケアナース)/看護師歴26年。急性期・長期療養・介護施設での勤務を経て、現在はフリーランスナースとして「まちのケアナース」を運営。ACP(人生会議)の普及と、地域での看護相談活動に取り組んでいます。

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この記事を書いた人

「みんなの師長さん」、藪内加奈子です!
介護施設管理職歴15年以上。

本人の望む、その人らしい豊かな最期を迎えてほしい。

高齢者の家族の「想い」と、高齢者の現実「老い・死」
高齢者施設で働く介護医療関係者のジレンマをなくしたい。

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